一般向けインターネット回線は、アナログの電話線を利用して、アナログモデムでデジタル変換を行う、極めて低速の通信速度でスタートしました。
そこから時代の経過と共に、「もっと自由に何処ででも繋がる」「より高速な回線速度」を実現するという二本柱で、飽くなき進化を遂げてきました。
現在までの、その進化内容を俯瞰してみましょう。
「もっと自由に何処ででも繋がる」は、3大キャリアでは、4G LTE回線で人口カバー率99.9%を超過していて、次世代回線である5Gについても、日々繋がるエリアが増え続けています。
最も遅くキャリアに参入した楽天モバイルも、4Gのエリア拡大に励み、2022年の4月には、人口カバー率が97.2%に達した事を発表しています。
どこでも繋がるという部分で、他社に大きく遅れをとっている楽天モバイルは、アメリカのAST SpaceMobile社に出資をしていて、同社と共同で行う、スペースモバイル計画を推進しています。
地球から低軌道に、テニスコートサイズの超大型サイズのアンテナを周回させることで、地上のスマートフォンに向けて、4G・5Gの電波を直接届ける衛星通信を行い、山間部や海上も含めた人口カバー率100%の達成を目論んでいます。
既にサービスを開始している、一般向けの衛星通信もあります。
ロシアの侵攻を受けるウクライナで、インターネット回線が維持されているのは、イーロンマスク(Elon Musk)氏が行っている、衛星通信事業の「SpaceX(Space Exploration Technologies Corp)」が関わっています。
このサービスは、専用の衛星アンテナにWi-Fiルーターが繋がっていて、衛星からの電波を掴み、送受信する事でインターネットを利用出来る環境が完結します。
地上の回線やアンテナ設備等が災害で利用出来なくなっても、インターネット回線の維持が可能なこのサービスStarlinkは、日本でも最近サービスをスタートさせています。
「より高速な回線速度」では、スマホ等の無線回線で4Gに変わる、5Gの広がりが中心になっています。
光回線でも、従来のフレッツ光回線の通信速度1Gbpsを大きく上回る、10Gbpsのサービスの、フレッツ光クロスが開始されています。
新しく登場した10Gbps高速通信のフレッツ光クロスは、マンションで利用出来るのか?解説していきます。
マンション集合住宅で光回線を利用する基礎知識
光回線は無線とは異なり、繋がってる光ファイバーケーブルを、利用者に直接接続する必要があります。
一戸建て住宅では、近くまで来ている光回線を、電柱から引き込み工事を行う事で利用するのに対して、マンション集合住宅では、各戸に直接光回線を接続することは基本的に行いません。
マンション集合住宅の共同利用方式とは?
(出典:NTT東日本)
マンション集合住宅での光回線利用は、建物内の共有スペースまで引き込んだ光回線を、スプリッタと呼ばれる分配器を利用して、各戸まで配線工事を行って接続します。
基本的にマンション集合住宅では、この共有スペース内まで引き込み工事が完了している光回線しか利用することが出来ません。
多くの建物では、既にNTT東西の光回線「フレッツ光」が共有スペース内まで、引き込み工事が完了しています。
どの光回線も、共有スペース内まで引き込み工事が完了していない建物では、個人の意向だけで光回線の導入は出来ません。
共有スペースの利用(光回線の機材を恒久的に置く事)について、建物の構造によっては固定用の金具を打ち込んだりする事や、場合によって一部に穴を空けて貫通が必要なケースも出てくるので、賃貸の場合なら大家さん・購入の場合なら管理会社や住民組合等の同意が必要になります。
建物によって各戸への配線方式は異なる
マンション集合住宅の共有部分から、各戸への配線は建物によって異なっています。
個人の意向だけで、配線方式は変更や選択は出来ません。
(出典:NTT東日本公式ページ*一部省略しています)
大きく分けて、3つの配線方式があります。
このうち、光回線方式でのみ、共有スペースから光回線で各戸を結んでいるため、
回線のポテンシャルの多くを引き出す事が出来ます。
光回線方式が利用出来る場合、多くのケースで光コンセントが部屋に備わっています。
(出典:SoftBank公式ページ*一部改変しています)
それ以外のVDSL方式・LAN配線方式では、残念ながら光回線のポテンシャルを活かす事は難しいです。
1Gbps(=1,000Mbps)の光回線が共有部分まで来ていても、同時利用者によって通信速度は左右されて、場合によっては数Mbpsの速度しか使えないケースもあります。
この方式では光コンセントの設置は無く、壁にモジュラージャックが設置されているケースが多くなります。
現在マンション集合住宅にお住まいで、光回線を利用しているのにも拘わらず、通信速度が遅い事にお悩みなら、この配線方式がボトルネックになっている可能性が大きくなります。
もし、回線速度の改善を求める手段として、従来の回線速度の10倍にあたる公称値10Gbpsの「フレッツ光クロス」をご検討なさっているなら、このボトルネックの配線方式を変更しない限り、解決する事は無いと言えます。
配線方式は工事で建物全体を変更する事も可能ですが、大がかりな工事が必要になり、前述の光回線を共有スペースまで引き込み工事と同様に、大家さん・管理組合・住民の同意など、超えなくてはならないハードルが多くなります。
時間と手間を考えた現実的な手段として、配線方式に依存しない、無線回線を利用したホームルーターの利用が最適です。
ホームルーターなら回線工事が不要で、コンセントを挿すだけで即、Wi-Fi環境が利用出来るようになります。
ホームルーターは3大キャリアからリリースされていますが、コスパの高さでソフトバンクエアーをオススメします。
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フレッツ光クロスとは?
「フレッツ光」は、NTT東西が提供している、1Gbpsの公称値を持つ光回線サービスです。
新しく登場した「フレッツ光クロス」は、それまでの10倍になる10Gbpsの公称値を持つ光回線サービスです。
フレッツ光クロス登場の背景
光回線に限らず、インターネット利用時の回線速度は遅いよりも速い方が良く、速すぎて困る事はありません。
しかし、先ほどマンションの配線方式でも触れましたが、利用する中でボトルネックが発生すれば、回線速度を向上させても意味がありません。
LAN規格の向上
これまでのLAN規格は、最大1Gbpsの速度を前提に設計されていて、一般的に利用されるWi-Fiルーターでは「1000BASE-T」という規格が使われてきました。
この規格の機器を利用する限り、接続する回線の通信速度が10倍の10Mbpsになっても、1Gbpsが最大通信速度のルーターでは、ユーザーのメリットは皆目ありません。
主流の1Gbpsには対応出来るので、通常の光回線の利用に支障は無くても、自社のサーバーやNAS(データの置き場所とお考えください)等の接続には、通常の光回線は関係が無く、よりサイズの大きなデータのやり取りを行える、新しい高速のLAN規格ニーズに対して、従来の10倍の速度を持つ「10GBASE-T」の規格が登場しました。
当初、この規格を持つ機器は高額で、企業などの限られたユーザーに向けた商品しかありませんでしたが、量産化が進み一般向けの「10GBASE-T」規格のWi-Fiルーターが、発売されるようになりました。
従来の「1000BASE-T」ルーターと比較すれば高額ですが、現在では無理なく購入出来る価格まで下がってきています。
この普及に一役買ったのは、新しいWi-Fiの規格です。
Wi-Fi規格の向上
Wi-Fiは無線LANの世界共通規格ですが、時代と共に新しい規格が登場していて、最大通信速度が大幅に向上しています。
規格名 | 新名称 | 周波数帯 | 最大通信速度 | 電波干渉 | 障害物 |
IEEE802.11ax | Wi-Fi 6 | 2.4GHz | 9.6Gbps | 弱い | 強い |
5GHz | 9.6Gbps | 強い | 弱い | ||
IEEE802.11ac | Wi-Fi 5 | 5GHz | 6.9Gbps | 強い | 弱い |
IEEE802.11n | Wi-Fi 4 | 2.4GHz | 600Mbps | 弱い | 強い |
5GHz | 600Mbps | 強い | 弱い | ||
IEEE802.11g | 2.4GHz | 54Mbps | 弱い | 強い | |
IEEE802.11b | 2.4GHz | 11Mbps | 弱い | 強い | |
IEEE802.11a | 5GHz | 54Mbps | 強い | 弱い |
以前から使われてきた、IEEE802.11の後に小文字のアルフアベットが付く規格名は、現在は解りやすい新名称に変わっています。
最新のWi-Fi6では、通常の光回線の通信速度1Gbpsを大きく上回るため、Wi-FiルーターをWi-Fi6のタイプに入れ替えても、そのポテンシャルを引き出す事は、光回線がボトルネックになってしまいます。
Wi-Fi5以降のWi-Fiルーターに買い換えて、それに対応する端末機器(スマホなどです)を揃えれば、ボトルネックになっている光回線の通信速度を、より速い(機器に見合った10Gbps程度)を望むニーズが当然出てきます。
通信速度10倍が実現できた理由
従来のフレッツ光の10倍の速度を持つ、公称値10Gbpsのフレッツ光クロスは、2020年の4月からサービスをスタートさせています。
このサービスを実現するのにあたり、従来のフレッツ光とは別に光回線を敷設しているかというと、そうでは無く同じ回線を利用しています。
大企業などの専用回線とは異なり、一般的なユーザーが利用する光回線では、一本の光回線を多くの契約者でシェアしています。
そのことで、現実的に支払可能な月額料金を実現しています。
このシェアする技術を「PON」と言いますが、従来からあるフレッツ光では、最大速度公称値1Gbpsの「GE-PON」を使っています。
これに対して、最大通信速度公称値10Gbpsの「10GE-PON」を使うのが、新しいサービスのフレッツ光クロスです。
フレッツ光が利用出来るマンションなら、フレッツ光クロスが利用出来る?
NTT東西が敷設しているフレッツ光は、唯一47都道府県全てをカバーしている光回線で、多くのマンション集合住宅の共有スペース内まで、既に引き込み工事が完了しています。
同じ回線なら、簡単な手続きだけで、10Gbpsのフレッツ光クロスが利用出来れば良いのですが、残念ながらそうはなっていません。
これは、一戸建て住宅の場合も同様で、フレッツ光が既に導入されていても、電柱等から光回線の引き込みから、全て回線を作り直す工事が基本的に必要になります。
マンション集合住宅の場合は、引き込み工事から行う必要がある事が大半で、共有スペースに置いてある内部装置も含めて、入れ替え工事が必要になります。
そのため前述のように、フレッツ光クロスを導入するためには、大家さん・管理組合・住民の同意から始める必要が出てきます。
例外的にはなりますが、マンション集合住宅でも低層階にお住まいなら、戸建て住宅と同様の導入方法によって、共有スペースを経由せずに、フレッツ光クロスが利用出来る可能性があります。
ただ、その場合でも当然ですが、大家さん・管理組合・住民の同意等が必要になってきます。
マンション集合住宅のフレッツ光クロス対応エリアは極めて限られる
数々のハードルを越える前に確認が必要なのは、フレッツ光クロスが利用出来る提供エリアになっているか?です。
フレッツ光クロスのサービスは、「戸建てのみ」「IPoE対応のみ」「限られたエリアのみ」でスタートしました。
そのため、マンション集合住宅ではフレッツ光クロスの利用は出来ませんでした。
NTT西日本では、フレッツ光クロスのマンションタイプをスタートさせましたが、
提供エリアは以下の様に、極めて限られています。
大阪府
「一部提供エリア」
大阪市
愛知県
「一部提供エリア」
名古屋市
NTT東日本では、東京23区の一戸建てだけに、フレッツ光クロスの提供は限定されてきましたが、2022年の9月以降は、東京近郊とマンション集合住宅への提供が発表されました。
しかし、現状で公表されている提供エリアは一戸建てタイプのみで、マンションタイプのエリアは公開されていません。
お住まいのマンションで、フレッツ光クロスの利用可否については、電話で問い合わせるより手段がありません。
今後は時間の経過と共に提供エリアも広がっていくと考えられますが、現状では利用出来るエリアは少ないと言えます。
利用出来るプロバイダも限られる
インターネットの利用には、アナログ回線を使っていた頃も含め現在でも、回線を問わず接続業者プロバイダが必要です。
プロバイダの役割として、契約者のリクエストにより、その都度インターネット上の、目的データが置いてあるコンピュータに繋いで、回線を通じてユーザーにデータを届けています。
フレッツ光の契約形態として、現在は主に法人契約で利用される、回線とプロバイダを2箇所で別契約する方法と、回線とプロバイダを一箇所にまとめた主に個人契約で利用される「光コラ